大須は萌えているか?

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F1[12]日本GP 決勝

※画像多め。この記事はF1[12]日本GP 決勝 ~スタート前の続きです。

決勝結果:
2012 FORMULA 1 JAPANESE GRAND PRIX - The Official F1 Website

決勝後ドライバーコメント:
Race - selected team and driver quotes - The Official F1 Website

決勝後記者会見:
FIA post-race press conference - Japan - The Official F1 Website

ひとり異次元を走っていたベッテル

予選ではレッドブルがフロントロウを独占、マシンの仕上がりを見てもレッドブルってゆーかベッテルが勝つのは「既定路線」ではありました。

↓こちらはフォーメーションラップに入るベッテルとウェバー。

そしてスタートからベッテルはまさに独走、他のマシンを一切寄せ付けることの無いパーフェクト・ウィンでしたね。どのくらい速かったかというと、速すぎてカメラに捉えられないくらいの速さです。

これでベッテルは4回鈴鹿を戦ってポールポジション4回、そして3勝という圧倒的勝率。これはミハエルを超える鈴鹿マイスターになる日はそんなに遠くないかもね。ちなみにミハエルの鈴鹿通算勝利数は6回。ベッテルの3回は歴代単独2位です。セナは実は2回しか鈴鹿勝ってない(ベルガーに勝利を譲ったコトもありますけど)。

ていうか、今回のベッテルは完璧だったのであんまり言うべきコト無いんですよ……。しかも、アロンソが1コーナーの混乱でレースをノーポイントで終わってしまったため、ドライバーズポイントでアロンソのわずか4ポイント差まで迫っちゃって。チームの勢いを考えると、今は明らかにベッテルに分がある状態でしょう。これは3連覇十分過ぎるくらい可能性ありますで。

ちなみに気は早いですが、過去にF1でドライバーズタイトル3連覇を達成したのはファン・マヌエル・ファンジオ(1954~57年に4連覇)とミハエル・シューマッハ(2000~2004年に5連覇)の2人だけです。

ただ、1-2フィニッシュが期待されたウェバーはなんと1コーナーで「グロージャン・ミサイル」に撃墜され大幅に順位を落とし、9位フィニッシュがやっと。いやはやグロージャン、まさか今回もやっちまうとは……。ウェバーは怒り心頭でグロージャンをくそみそに批判している様子。

「最初のラップでまたしてもグロージャンが頭のいかれたことをやったよ」と、ウェーバーは立腹した。「彼はどのレースでも出来るだけ速く3コーナーに入ろうとするんだ。イライラする。彼にはもう一度休暇が必要かもしれないね。完全に彼のミスだけど、最初のラップの事故で何回同じミスをするつもりなんだろう?本当に厄介だね」

via: ウェーバー グロージャンを痛烈批判 - GPUpdate.net

グロージャン自身、「愚かなミスだった」と認めレース後ウェバーに謝罪したとコメントしてます。

It was a stupid mistake. Mark [Webber] came to see me after the race and was obviously not happy, but I apologised and we have to move on.

via: Romain Grosjean:Race - selected team and driver quotes - The Official F1 Website

私は1コーナーで観戦していたのでスタート直後の混乱がよく見えたのですが、グロージャンの件についてはスタンドのあちこちから「やっぱりなー」みたいな声が上がっていたのが印象的でした。いやでもね、これ可夢偉がスタートでウェバーの前に行ってなかったらウェバーの代わりに撃墜されてた可能性もありますからね、危機一髪でしたよ。

にしても、欠場開け2戦目にしてまたやらかしてしまったというのは大きなマイナスですねぇ。

可夢偉可夢偉

トップはベッテルの独壇場だった代わりに、最高に盛り上がったのは表彰台争いでした。今まで上位グリッドを獲得したときには必ず悲惨なスタートになってしまっていた可夢偉が見事なスタートダッシュを決め、対照的にスタートがイマイチだったウェバーをかわして2位浮上。もうこの時点でスタンドは大盛り上がり。

ウェバーが上位から姿を消し、そして第1スティントのレースペースを見る限り後ろのバトンをややリードするタイムで走れていたので、3位どころか2位表彰台も……などと夢が広がりまくる展開。しかし、ここでマッサという思わぬ伏兵が登場するワケです。

Q2ノックアウトという冴えない予選だったマッサですが、元々のマシンの仕上がりは良かったんですよね。そしてスタート後の混乱を切り抜けてうまくジャンプアップして、可夢偉とバトンにぴったりくっついて走り、そしてタイヤ交換をやや遅らせてピットストップ後に2位へのジャンプアップに成功。バトンと可夢偉はピットアウト後にトロロッソのリカルドに引っ掛かってしまい、タイムをロスしていたんですよね。

そしてマッサはハードに履き替えた第2、第3スティントのペースが素晴らしかった。同じくハードで挑んだ予選Q1で好タイムをマークしていたコトを考えれば、これは頷ける結果です。時折ベッテルを凌ぐペースで走行し、ベッテルも完全な「クルージングモード」には入れませんでした。……ていうか、これだけの走りできるのになんで2年も表彰台に上れてなかったのか……。

ベッテルとマッサが1~2位のポジションを固めてしまっているので、残るは3位争い。第1スティントではバトンをリードしていた可夢偉ですが、ハードに履き替えてからはバトンが巻き返してきます。可夢偉もバトンもタイヤマネージメントには長けたドライバーですが、第2スティントで先にタイヤの寿命が来たのは可夢偉。今回の鈴鹿では上位入賞者は皆中古ソフト ⇒ 新品ハード ⇒ 新品ハードという同じタイヤ戦略を採用していたので条件はイーブンだったんですけどね。

可夢偉のタイムの落ち幅が大きいと見るや、チームは31周目に可夢偉を2度目のピットに。対してバトンは35周目に2度目のピットイン。可夢偉はタイヤ交換後再びプッシュし、またザウバーピットクルーマクラーレンとほぼ同じタイムでピット作業を終わらせる奮闘を見せてポジションをキープ。このチームの判断、ピットクルーの働きは素晴らしかったと思います。最初からこのクオリティで頼むよ、とも言いたくなりますが、なんというかチームからも「可夢偉を表彰台に!」みたいな熱意を感じました。

ただ、可夢偉が先にピットに入ったというコトは、最終スティントも先にタイヤの寿命が来るというコトでもあります。そこからの可夢偉のタイヤマネージメントはまさにギリギリの状態で、ジリジリと差を詰めてくるバトンに対し要所要所で自己ベストを更新し対抗、しかしタイヤを最後までもたせなきゃいけない分ずっとプッシュし続けるワケにもいかず……という、もう観ているこっちが「早くレース終わってぇぇぇ」と叫びたくなる状態。

FanVisionで可夢偉とバトンのオンボード映像、それからセクタータイムを確認し、そして1コーナーに飛び込んでくる可夢偉とバトンの差を見て「ああまた少し縮まった」とハラハラし、今までずっとF1観てきた中でもここまで気が気じゃ無い展開って初めてです。

↓少しわかりにくいですがチェッカー目前、可夢偉のすぐ後ろまで迫るバトン。

可夢偉としては差を1秒以内まで近づけてしまうとバトンがDRSを使えてしまうので、シケイン手前のDRS計測ポイントで1秒以内にバトンを入れないというコトが極めて重要。そしてラスト2周の段階で可夢偉とバトンの差は1.1秒。気が気じゃ無い。一方その頃、ベッテルは余裕綽々で全体ベストタイムをマーク。ザウバーにも翼を授けてください。もーこのときばかりはバトンの巧みなペースメイキングがホントに憎たらしい……!

しかしファイナルラップ可夢偉がDRSゾーンエンドである1コーナーでバトンを後方に従えたままクリアしたのを観て、ようやく「あ、表彰台だ!」と思うコトができました。あと唯一懸念のあったシケインをクリア、チェッカーを受けた瞬間はスタンド大揺れ。最終的にバトンとの差はたった0.5秒。直後1コーナーにやってきた可夢偉のマシンには割れんばかりの声援が。私も写真撮るどころの騒ぎではありませんでした。この瞬間にここに居られるコトが本当に嬉しかったですね。

表彰台ではポイントランキング上でアロンソとの差を一気に詰めたベッテル、2年ぶりの表彰台となるマッサ、そして可夢偉が3者3様の喜びを爆発させていて本当に良い光景でしたね。マッサが「シャンパンファイトのフライング」をしたり、可夢偉可夢偉で初の表彰台でも実にマイペースな振る舞いを見せたり。

表彰台インタビューの最後にはベッテル可夢偉に「一緒にポディウムに上がったのはF3以来で、ここに一緒に居られることは本当に嬉しい」みたいなコトを英語でコメントし、それを可夢偉が日本語に訳して「そんなことを言ってくれるベッちゃん、いやベッテルに感謝です」と応じたりして。なんだもうこんな面白い表彰台初めて見たぞ。

ミハエル追い上げた、しかし

そして忘れちゃいけないのがミハエル。ラストラン(ただし2度目)となった今回の鈴鹿ですが、10グリッドダウンペナルティによりカーティケヤンと同じあたりからスタート。そこから着実に順位を上げていく様はやはりミハエル・シューマッハで、レースペースも上位陣と遜色ないものでした。

しかし、11位まで追い上げてあとひとつでポイントゲットというところで、前を塞いだのはまたしてもトロロッソのリカルド。トロロッソはストレートスピード重視(予選のスピードトラップはリカルドがトップ)で、DRSゾーンでもなかなか捉えきれなかったんですね。1コーナーでさんざん揺さぶりを掛けるミハエルですが、リカルドを崩せずにそのままチェッカー。

↓こちらは2コーナーアウト側からリカルドを狙うミハエル。

1コーナーで観ているとミハエルの走りはとても印象的だったんですが、でもポイントには手が届かなかった。後方から追い上げてのポイントゲットはミハエルの得意技だったんですが、届かなかった。ミハエル自身にはまだスピードはありました。でも時折見せるミスだとか、それに付随するペナルティだとか、チームの戦闘力だとか、いろんなものが噛み合わなくなっていて、フェラーリの時のようにそれを再び噛み合うようにするコトができなかった。

同じようにリカルドに前を塞がれた可夢偉は、DRSゾーンでもシケインでもなく、得意のヘアピンでオーバーテイクをしてみせました。でもミハエルはできなかった。ミハエル・シューマッハが引退する理由、それがそのまま現れたレースだったように感じました。

戦い終わって

ホントに大満足の日本GPでした。レース後、改めて電光掲示板の3位に「KOB」の文字があるのを見てニヤニヤしてしまったりして。

いやね、今回の可夢偉の3位ってドライバー、マシン、チームがきちんと噛み合った結果なのはもちろんなんですけど、好調だったマクラーレンのバトンを正面から打ち破ったという点にすごく大きな価値を感じます。それに、ペレスや今回のマッサのように「Q2ノックアウトされたことによるアドバンテージ」を活かしたものでもなく、3番グリッドからスタートして正面からのガチンコ勝負で手にした3位です。しかも展開によっては2位もあり得たってくらいの。

私は基本的にF1そのものが好きで、そこに日本人ドライバーが居るか居ないかってのは副次的な要素なんですね。でもそりゃやっぱり日本人ドライバーや日本のメーカーが活躍してくれたら嬉しくて、世界のトップレベルと互角に戦える日本人ドライバーを待ち望んでいるワケで。だから琢磨とホンダの活躍には興奮したし、琢磨が最終的にF1の居場所を失うのは残念でした。

んで、琢磨の表彰台から8年という歳月を経て、しかも日本GPという舞台で、可夢偉マクラーレンフェラーリ相手に互角以上の戦いをして表彰台を獲得したコトがもの凄く嬉しい。そしてこれが可夢偉のキャリアにプラスになって欲しいし、鈴鹿のF1が継続していくひとつの起爆剤になって欲しい。

レース後開放されたグランドスタンドに行ってみると、マーシャルの皆さんが集合して鈴鹿50周年の感謝の意を表していました。

観客数も去年からまた増えたそうです。

主催者の発表によれば、日曜日の観客数は10万3千人に達したとのこと。

これで初日の4万1千人、土曜日の6万4千人と合わせ3日間トータルで20万8千人となり、昨年の19万9千人を大きく超える結果になった。

かつて3日間トータル30万人を超えるブームに沸いた日本としては実感がないが、例えば今年のバーレーンGPでは主催者発表の2万8千人(決勝日)という数字すらメディアから疑いの目でみられているのが現状で、日本のF1ファンの熱心さは群を抜いている。

via: 可夢偉人気もあり日本GP(鈴鹿)の観客は20万人超え: FMotorsports F1

かつての「異常」なF1人気と比較すると少ないのかもしれませんが、鈴鹿のF1GPは今でも世界に誇れるイベントでしょう。でも、地上波の放送は切られちゃうわ、可夢偉の来季シートが不安視されるわ、鈴鹿のF1開催契約も2014年以降はまだ未定だわで、このままだと「日本GP」自体が消滅の危機を迎えてもおかしくない状況です。

大げさな話ですけど、この可夢偉の表彰台からまた「日本のF1」が良い方に転がってくれれば良いなぁ、なんてコトを思ったりして。

まだまだ、「鈴鹿のF1」が観たいです。

……あ、ちなみに今回の私の決勝観戦装備は可夢偉のシャツの上にメルセデスGPというミーハーな組み合わせでした!

いやレッドブルのシャツは予選のとき着ちゃったし、ロータスのシャツもカッコいいなと思ったけど今のロータスロータスと認めたくないのでアレだし、というコトで素直に応援したい可夢偉と、去りゆく偉大なチャンピオンに敬意を表して、ね。

あともうちょいオマケ。
F1[12]日本GPのマーシャルさん達がぶっ飛んでる件