日本の暑さも大概ですが、スペインも相当暑いようです。カナダ出身のストロール曰く、「カナダ人はこんな暑さに耐えられるようにはできていない」そうです。アプリで見る限り、Q3時点での気温が32℃、路面温度49℃となっているので、気温39℃とかを記録している地方に住んでいる身としては「まだヌルいほうやん」と言いたくもなりますが、しかしその状態でレーシングスーツ着てヘルメット被ってレースやるんですから、そりゃ耐えがたいわな。例年なら夏休み期間中だしね、今は……。そんなワケで、F1スペインGP予選。
- 予選結果: FORMULA 1 ARAMCO GRAN PREMIO DE ESPAÑA 2020 - QUALIFYING
- 予選ダイジェスト: Qualifying report: Hamilton beats Bottas to pole in sweltering Spanish GP qualifying as Verstappen takes P3 | Formula 1®
- 予選後各チームコメント: What the teams said - Qualifying in Spain 2020 | Formula 1®
- 予選後記者会見: FIA post-qualifying press conference - Spain | Formula 1®
メルセデスのタイヤトラブルは再発するのか?
今回、FP1から予選まで、ずっとトップ3がメルセデスの2台とフェルスタッペンに固定されてますね。基本的にずっとハミルトン、ボタス、フェルスタッペンの順で、FP1だけボタスとハミルトンの順序が入れ替わってます。フェルスタッペンは「3番手のサブスクリプションを持っているみたいだ」なんてコメントしてたりもしますが、裏を返せば今週末のレッドブルのパフォーマンスにはかなり一貫性があるというコトでもあり、良い兆候と言えるのかもしれません。
MV: Yeah. I mean it seems like I have a subscription on P3. I think I’ve been P3 the whole weekend. It was alright.
via: FIA post-qualifying press conference - Spain | Formula 1®
予選では相変わらずかなりの差を付けられていますが、レッドブルはレースペースにはかなり自信があるようですし、決勝も同じように暑いコンディションならばちょっと期待は持てるかもしれません。
それに、今回はQ3進出組もQ2を全車ソフトタイヤで通過しており、決勝は2ストップ作戦が主流になると見て間違い無さそう。後方集団は1ストップ作戦もありそうですけどね。フェルスタッペンはこのサーキットでのオーバーテイクの難しさとピット戦略の重要性を指摘しており、タイヤに優しいレッドブルがうまくメルセデスに追随しながらソフトタイヤである程度引っ張る作戦を取るコトができれば、もしかすると……という気はしますね。
Q2で誰もミディアムを選ばなかった理由について問われたフェルスタッペンは、「ここではソフトをスタートタイヤにしても大丈夫だと思うよ。普通は一番柔らかいコンパウンドはすぐダメになってちょっとトリッキーなんだけど、このトラックは大丈夫」みたいなコメントしてます。
MV: Basically because I think the soft tyre is good enough to start the race on. Normally the softest compound is a bit more tricky as it falls apart quite quickly. I think it’s alright at the track here.
via: FIA post-qualifying press conference - Spain | Formula 1®
タイヤへの攻撃性が高いとされているシルバーストーンに対し、ここバルセロナは路面がスムーズでソフトタイヤでもマネージメントしやすいってコトなんでしょう。そんな路面において、メルセデスとレッドブルの差がどの程度出るのかが気になるところ。メルセデスの2人もシルバーストーンほどはタイヤに対する懸念は抱いていないようで、それがメルセデスもQ2でソフトタイヤを選んだ理由なんでしょう。
フェラーリカスタマー勢にやや光明が……?
あと今回の予選で大きなトピックといえば、キミ・ライコネンが今季初のQ1突破を果たしたコトでしょうか。予選でどうにも元気が無かったので「もしかして今期ずっとQ2進出できないまま終わるのでは……」なんて思ったりもしてましたが、とりあえず良かった良かった。ライコネンは「ソフトタイヤを使い切っていなければQ3を狙えただろう」みたいなコメントまでしていて、マシンの仕上がりに大満足のご様子。こんなコメント今季初めて聞いた気がする。
We made it to Q2 and we could have achieved even more, but we didn’t have any more sets of soft tyres so we had to use the mediums. Perhaps we could have been in the fight for Q3 but for now we have to be happy.
via: What the teams said - Qualifying in Spain 2020 | Formula 1®
ジョビナッツィはフロアにダメージを負った影響もあるのか20番手に終わっちゃってますけど、ライコネンのポジティブな感触が今後のレースでも継続できるかどうかですね。
ハースも金曜フリー走行ではグロージャンが非常に好調で、FP1とFP2で6番手・5番手タイムを叩き出していたりしたんですが、土曜日になった途端にいつものポジションに轟沈。ハースも不振脱出の糸口を掴めたかに見えたのに……。グロージャン自身、マシンが自分好みに決まっているとめたくそ速いタイムを出せるけど、そうじゃないと途端にダメになる感はあります。
しかしこういう事例を見ると、アルファロメオやハースの不振は、必ずしもフェラーリPUの問題だけでは無さそうですね。ていうか、昨年はフェラーリPUのパワーに依存したセットアップをしてしまっていたので、そこからの切替ができていないというか。セナを擁していた時代のマクラーレンが、ホンダパワーに依存しすぎて空力開発をおざなりにしていたっていう話を思い出しますが。ただ、マシンの改良とセットアップを煮詰めるコトで、コンスタントにQ2進出して中団を争えるパフォーマンスが手に入る可能性は示されたのかな、と。
そういや、FP3でルノーのオコンがハースのマグヌッセンに追突しそうになって慌ててステアリングを切り、そのままスピンしてマシンを壊すという事故がありましたが、あれ結局双方お咎めナシになったんですね。
Stewards say no further action on ‘unfortunate’ Ocon/Magnussen FP3 shunt | Formula 1®
マグヌッセンはERSの回生のためにアクセルを戻してはいたもののブレーキは踏んでおらず、またオコンは事故の直前に脇見をしていてマグヌッセンの動きに気付いておらず、状況として双方に明確な非はなく、不幸な事故だったというワケです。事故映像見た瞬間「まーたマグヌッセンか」と思っちゃいましたごめんなさい。
それから本家フェラーリはルクレール9番手、ベッテル11番手と相変わらず低迷しておりますね。ベッテルは今回シャシー交換をしたようですが、それでも明確な違いはないようで。ベッテルは今回の予選中、無線でチームに向けて一言も言葉を発しなかったなんていう記事まで出ており、いよいよ自分の殻に閉じこもっちゃってるような気がしないでもありません。セッション後のインタビュー映像見ても、ぜんぜん元気無いしなあ……。
Vettel didn’t say a word to Ferrari on his radio throughout qualifying · RaceFans
エンジンモードが1つになることの影響
今回のレースは関係ないですが、次戦のベルギーGPからパワーユニットのエンジンモードを1つだけにする、って話が急遽持ち上がって波紋を拡げてますね。なんでシーズン途中にいきなりそんな変更をするの、と思っちゃいますが、まあ予選モードで有利な立場にあるメルセデスのパフォーマンスをそぎ落とすため、というのは容易に想像が付くところ。
ハミルトン「F1予選モード禁止はメルセデスの速さを奪うための策」 | F1 | autosport web
「予選モード禁止」なんていう言われ方をしていますが、エンジンモードを1つにせよって話なので、決勝の走行中にエンジンを労るモードにしたりだとか、攻めるモードに切り替えるというコトもできなくなるコトになります。というコトは、昨年のオーストリアGPで有名になった、ホンダPUの「エンジンモード11、ポジション5にしろ」みたいな無線が飛び交うコトも無くなっちゃうワケです。それはそれでちょっと寂しいような……。いざという時にリミッター解除してパフォーマンスを絞り出す、という展開はロボットアニメでも鉄板ですからね(?)。
ただまー、メルセデスワークスのパフォーマンスを見るに、モードを1つにしたところでその優位性は揺るがないでしょうけどね。むしろ影響を強く受けるのはメルセデスカスタマーであるレーシングポイントやウィリアムズかもしれません。仮に予選モードが無くなって0.5秒失ったとして、メルセデスはまだポールポジションを確保できますが、レーシングポイントはマクラーレンやフェラーリに食われる可能性が出てきますからね。
来季はメルセデスの体制が変わる?
あと、メルセデスのトト・ウォルフの契約が今年いっぱいで満了するみたいですが、本人はまだ来季の身の振り方について決めていないみたいで、ひょっとしてメルセデスを離れる?なんていう観測も出ているようで。
Wolff still weighing up future Mercedes Formula 1 role - F1 - Autosport
「来季もメルセデスの仕事を続けない理由はない」としながらも、来季の続投について明言を避けているところを見ると、他の選択肢と天秤に掛けている状態であるのは間違い無いようです。以前、ウォルフがアストンマーチンの株主になったコトから、アストンマーチンのディレクター職に就くのでは、なんて噂も流れましたが、これは本人が明確に否定してましたね。
トト・ウルフ、アストンマーチンの株式を購入も、メルセデスF1の代表職は継続濃厚
トト・ウォルフのコメントを見ていると、現在フォーミュラEチームの代表の座についている妻のスージーがどうのこうの言っていたりもするので、ひょっとすると夫婦別々にレースやり続けるよりも、一緒にフォーミュラEやりたいみたいな思いもあったりするんでしょうか。8年間ひたすらF1に打ち込み続けたんだから、そろそろ家族と一緒に過ごしたい的な。
"Susie [Wolff] is in a good place running a Formula E team and that means she’s away a lot. I’ve been to God knows how many races, 120 Formula 1 races, in the last eight years.
“That is something we’re thinking about.”
via: Wolff still weighing up future Mercedes Formula 1 role - F1 - Autosport
ハミルトンはもしウォルフがメルセデスを離脱した場合、チームに良く無い影響があるんじゃないかと懸念していましたが、ウォルフの態度が固まらないコトと、ハミルトンの来季契約がまだ発表されないコトにはなんか関係があるんですかね?とはいえ、メルセデスのシート以外にハミルトンの要求を満たせる場所は無さそうですけど。