大須は萌えているか?

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F1[20] バーレーンGP 決勝

F1を見始めてかれこれ経ちますが、自分が見た中でも一番大きなクラッシュだったように思います……F1バーレーンGP決勝。

極めて珍しい「爆発事故」

とにもかくにも、1周目のスタート後程なくして発生したグロージャンのクラッシュのインパクトが大きすぎて、それ以外のレースの記憶があやふやになるレベルでした。……とはいえ、クラッシュが発生したあとの赤旗中断を見て、私はリアルタイム観戦を諦めて録画視聴に回ったんですが(平日勤務のサラリーマンなもので……)。

‘Crazy… I’ve not seen fire like that before’ – Medical Car team describe scene that awaited them after Grosjean’s huge accident | Formula 1®

クラッシュの原因自体は、グロージャンが後方を気にしないまま斜めにカットするようなライン取りをした結果、グロージャンのリヤタイヤと後ろに居たクビアトのフロントタイヤが接触、コントロールを失ったグロージャンがバリアに突っ込む……というありふれた(?)ものだったんですが、バリアに突っ込んだ途端にマシンが爆発炎上してしまったという大規模かつ極めて珍しい事故となってしまいました。F1マシンの爆発炎上事故なんて通常あり得ないレベルですからね。

なぜかといえば、F1の燃料タンクはコクピットと同じサバイバルセル(モノコック)の一部となっており、厳しい耐荷重試験に合格しなければならない構造になっているハズで、かつタンクとエンジンを繋ぐすべての配管は自動閉鎖・分離バルブを備えなければならない、とテクニカルレギュレーションで定められているんですよね。つまり、衝撃に晒された場合でもそう簡単に燃料が漏れない構造になっているワケですね。

なので、自分がF1を見始めてこの方、F1マシンが爆発的な炎上をするシーンなんてのは観たコトなかったワケです。エンジンが壊れてマシン後方から火を噴くシーンは良く見ますけど、あのガソリン特有の一気に燃え広がる炎上は……。あるとすれば94年のドイツGPでヨス・フェルスタッペン(マックスパパ)のベネトンが給油中に燃料をこぼしてしまい、そこに火が付いたシーンくらい。あれは完全に人災でした(給油機の違法改造問題に発展した)。私以上のオールドファンの方であれば、89年のサンマリノGP、タンブレロでクラッシュしたベルガーのマシンが炎上したシーンを連想するかもしれません(私が見始めたのは92年頃)。カーボンモノコック以前のF1であれば、それこそ炎上事故なんて日常茶飯事レベルだったようですが、近年のF1マシンではまず起こりえないと思っていた事故でした。

グロージャンのマシンは前と後ろで真っ二つになっていましたが、F1のパワーユニットってモノコックにボルトで直付けされており、シャシーの構成要素の一部になっているんですよね。バリアに激突したとき、ちょうどこの結合部分に支柱が直撃するなどして破損し、モノコックパワーユニット部分でマシンが引き裂かれたような格好になったんだと思われます。モノコックは炎上したあとも形を保っていましたし、マシン後部もキレイに残ってましたからね。とはいえ、これも相当派手なクラッシュをしても普通はあり得ないようなシーンで、モノコックパワーユニットがバラバラになった事故ってちょっと思い出せないくらい。逆に言うと、ここが一瞬で散けてしまったが爆発的な炎上を招いてしまったようにも見えます。

なので、素人考えで想像すると「あり得ないくらいに当たり所が悪かった」という話になるのかなと思ったりするんですが、すでにFIAが調査チームを組んで詳細な原因解明に乗り出しているようなので、続報を待ちたいと思います。

FIA have launched investigation into Grosjean crash, confirms Race Director Michael Masi | Formula 1®

ロス・ブラウンもコラムの中で、なぜマシンが炎上したのか、そしてなぜマシンが真っ二つになったのかを理解する必要があると述べてますね。

The FIA, working with the team, have to understand the dynamics of what happened in the accident to see if improvements are possible. It was a pretty severe impact and there are limits as to what you’d be able to contain or control. But penetrating the barrier like that has to be understood. It also has to be understood why there was a fire and why the car broke in two.

via: The Ross Brawn Column: It was a relief to see Grosjean walk away - now his accident needs to be better understood | Formula 1®

正直あの炎上を見た瞬間はわけがわかりませんでしたし、ドライバーの安否が非常に気がかりだっただけに、グロージャンの無事が確認できた瞬間は心底ホッとしました。しばらく事故映像のリプレイも無かったので、非常に悪い予感がしちゃいましたしね。ただ、グロージャンの無事が確認できた途端に繰り返し事故映像のリプレイが流され、リカルドがこれに強い不快感を表明していますね。

Ricciardo disgusted by “disrespectful” Grosjean crash replays - F1 - Autosport

これに対し運営側は「ドライバーの安全が確認できるまでは一切映像を流さないプロシージャがある」とし、安全が確認出来た後に映像を流しつつ最新情報を視聴者に伝えるようにしていると。日本GPでのジュール・ビアンキの事故のときは、事故の映像が完全にシャットアウトされて流されることはありませんでしたね。また、ハースのギュンター・シュタイナーはこうしたF1運営側のロジックを支持しているようで。

F1 defends Grosjean crash TV coverage after Ricciardo criticism - F1 - Autosport

リカルドは何度も繰り返しショッキングな映像を流すコトを批判しており、ドライバーの状態等の最新情報を報道することを批判しているワケではないと思うので、いささか話が噛み合っていないようにも思えますが。

ともあれ、あんな事故から自力で脱出してみせたグロージャンには驚かされましたし、DRIVER OF THE DAYに選ばれたのも納得です。にしても、1周目でリタイヤしたドライバーがDRIVER OF THE DAYに選ばれるっていうのも、おそらく史上初ですよね?

ヘイローがあったコトでバリアからグロージャンの頭部が保護され、衝突時の大きなGに晒されながらも意識を失わずに済み、そしてバリアにめり込んだモノコックから脱出できるだけの隙間が上手いこと開いていたから脱出できた感じでしたね。それに難燃素材のレーシングスーツやヘルメットが役に立ったことは言うまでもありません。F1の安全性に対する取り組みが功を奏した形と言えますが、ただもう少し運が悪ければ死亡事故になっていただろうと思うと、安全性の追求には終わりがないのだ、とも思い知らされます。

グロージャンは軽傷で済んだとはいえ、さすがに来週のレースには出場できないというコトで、代役にハースのリザーブであるピエトロ・フィッティパルディ(エマーソンの孫)が起用されるコトになったようで。

Haas reserve driver Pietro Fittipaldi to replace injured Grosjean for Sakhir Grand Prix | Formula 1®

F1から身を退くと思われるグロージャンにしてみれば、ここにきての欠場は無念でしょうが……最終戦で復帰できることを祈っております。しかしF1にフィッティパルディの名前が帰ってくるのも久しぶりですよね……94年のクリスチャン・フィッティパルディ以来かな?

なお、レース後の記者会見で「こういう事故が起きたあと、レースを続けるかどうかの選択権がドライバーにあるべきと思いますか?」みたいな質問をされたフェルスタッペンは、「もし『乗りたくない』なんてヤツが居て、もし自分がチームのボスなら、そいつを2度とシートには座らせないよ」みたいなマッチョすぎる過激発言をしたりもしてますが……。ハミルトンは「君が僕のボスにならないことを望むよ」と返してますが、なんか波紋を拡げそうな発言だなあ……。

MV: Yeah, they get why you win the race. We’d be the team boss, I would kick him out of the seat.  
LH: Hmm? 
MV: If the guy wouldn’t race and I would be the team boss, I would tell him then you never sit in the seat again. Yeah.  
LH: I hope you’re not my team boss.  
MV: I hope I will never be a team boss anyway.  
LH: I feel sorry for anyone who is going to be your driver in the future.

via: FIA post-race press conference – Bahrain | Formula 1®

そのほか

……グロージャンのクラッシュの話が長くなりすぎた。

しかし、赤旗中断後ようやく再開されたかと思ったら、今度はストロールとクビアトが接触してストロールのマシンが転覆、セーフティカーが入るという流れはさすがに「なんなんだこのレース……」と思ったりはしました。クビアトも散々ですね、なんか。しかもペナルティまでもらっちゃったし。まあ、グロージャンとの接触は完全な貰い事故でしたが、ストロールとの事故はどっちもどっちかなー、という気がしました。しかし、なんかずいぶんクビアトに厳しい裁定ですね。しかもそれで11位フィニッシュ、ぎりぎりポイント圏外で終わるっていう……。

散々なのはレーシングポイントも同じで、再び表彰台に乗れたハズのペレスが最後の最後でエンジントラブルでストップ、チームはノーポイントで終わるという悲劇。マクラーレンが4位・5位フィニッシュを飾り22点を加えた格好になり、コンストラクターズ3位争いで一気に有利な立場に。モニターの前で頭を抱えるサフナウアーにはさすがに同情したくなりました。

あと、ペレスがリタイヤしたことで3位表彰台に上ることになったアルボンですが、金曜日に大クラッシュしてマシンをぶっ壊していたコトを考えるとよくここまでリカバリできましたよね。フェルスタッペンにはまだまだ太刀打ちできるレベルにはありませんが、クリスチャン・ホーナーはアルボンの去就について「シーズンが終わってから考える」と態度を軟化させているようで。

Red Bull to delay decision on Albon’s F1 future until post-season - F1 - Autosport

これ、レッドブルのシートに望みを託しているペレスにしてみれば、敵に塩を送ってしまったコトになるのかも……?

あと、そのペレスがパワーユニットから出火してコースサイドにマシンを止めたとき、消火器を持ったマーシャルが慌ててコースを横切るシーンがノリスの車載映像で捉えられており、これはこれでショッキングな映像でしたね。このマーシャルはレースコントロールの許可を得ることなくコースを横切ってしまったようで、ノリスが無線でブチ切れていたのもやむを得ないところです。

F1: Marshal who ran across track “reacted on instinct” - Masi · RaceFans

マイケル・マシが説明するように、先にあのグロージャンの事故があったものだから、火を見たマーシャルが過敏になりすぎていたというのはありそうですね。大きい事故が起きると、それが別の事故を呼ぶことは多々ありますが(94年のサンマリノもそうだった)、これって人間の心理によるところもありそうな気がします。たくさんの課題と教訓を残したレースとなりました。ところでこのシーンを見た川井ちゃんが「トム・プライスの事故思い出した」みたいなコト言ってましたけど、それ今から40年以上前(1977年)の事故ですからね……まあ非常に凄惨な事故としてグランプリ史上では有名な一件ですから、すぐに連想しちゃったんでしょうけど(敢えてリンクは貼らない)。

まあホントに、大きな怪我人が出なかったのは奇跡としか言い様が無い。

(あ、そういえば今回メルセデスにまったく触れてないや……なんでボッさんだけあんなにパンクするんやろ……)