大須は萌えているか?

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F1[21] ロシアGP 決勝

いやー……ある意味よくできたドラマというか……でも見方を変えるととても残酷な現実というか……いろんな感情が交錯する展開でしたね。F1ロシアGP決勝。

レース終盤にまさかの展開

土曜日は雨に振り回された格好でしたが、日曜日のスタート時はドライコンディション。ただ空は曇っており、少し離れた海上には強い雨雲がざんざか雨を降らせており不穏なムードは漂っておりました。

スタート後雨を警戒する無線通信も時折飛んでおりましたが、特に降ってくることもなくレースが終盤へとなだれ込んでいったので雨のリスクのことは頭から消えつつあったんですが、残り5周くらいのタイミングで雨が振り出し、そして霧雨程度なのかと思いきや一気に本降りに。このレース終了間際の突然の雨に対するリアクションが、レース結果を大きく振り回す結果となってしまいました。一番の被害者と言ってもよさそうなのは初優勝のチャンスがスルリと逃げていってしまったノリスでしょうし、一番ラッキーだったのはこの雨に乗じて一気に2位までポジションを上げたフェルスタッペンでしょう。

タイミングアプリで振り返ってみると、ノリスやストロールに対して雨を警告する無線が入っているのが47周目。ラッセル、ボタス、ライコネンらがインターミディエイトに履き替えるためにピットに飛び込んだのが48周目……とはいえ、彼らから見ると47周目の終わり。ノリスとハミルトンは彼らより60秒以上先行していたので、ターン10を回った辺りです。この辺りはすでに相当滑りやすくなっていたハズなので彼らも雨のヤバさは感じたんじゃないかと思うんですが、48周目の最後でも彼らはピットに入らずステイアウトを選択。マクラーレンメルセデスは双方ともピットに入るよう無線で促していたみたいなんですが、ふたりとも最初はそれを突っぱねたんですね。

後続のペレス、アロンソルクレールも48周目の終わり時点ではステイアウト、フェルスタッペンとサインツはピットへ。結果的に、この48~49周目でインターに履き替えたライコネン、ボタス、ラッセル、フェルスタッペン、サインツといった面々が大きく順位をゲインしたコトになるので、ここがタイヤ交換のジャストタイミングであり、勝負の分かれ目だったというワケですね。ノリスとハミルトンの48周目のラップタイムは54秒台と55秒台まで落ちており(その前の周は42秒台)、急激にタイムが悪化した様子が見て取れます。ただフェルスタッペン曰く、これより早いタイミングでピットに入っていたとしたら、コースの乾いている部分のほうが多かったため逆にタイヤが壊れてしまっていただろう、とのこと。

I think at the end of the day we made the right call and the right lap to box – because the lap before probably, if we would have boxed, I would have destroyed the Inters in that one or two laps because of it still being a bit too dry for two-thirds of the track.

via: Max Verstappen: FIA post-race press conference - Russia | Formula 1®

48周目終わりの段階でハミルトンとノリスがピットに入らなかったのは、「まだドライ路面もかなりある」っていうのがあったのかもしれません。結局ハミルトンは49周目の終わりにピットに飛び込み、ノリスはステイアウト。この選択が勝負を決めてしまいました。まあ、ハミルトンにしてみれば後方との差はまだたっぷりあったのでピットに入っても順位を落とすコトは無かったので動きやすかったワケですが、ノリスにしてみればハミルトンより先に動くわけには行かなかったってコトでしょうね。チーム的にはピットに入れたかったようですが、ノリス自身の判断でステイアウトしたみたいですけど。それだけ優勝にこだわっていたというコトでしょう。また、ノリスとしてはそれまでは「すべてコントロールできていた」というのもあっての判断ですかね。

“I think I had the confidence beforehand,” added Norris. “I knew I was capable of doing it, I’ve felt capable of doing it for a while so I don’t think that’s really changed. Just a bit of heartbreak. I felt like I did everything I could, even when it got tricky at the end. I made a couple of mistakes but still kept Lewis behind and started to pull away a little bit.”

via: ‘Everything was under control’ – Devastated Norris convinced Sochi win was on without late rain in Russian GP | Formula 1®

ハミルトンの動きを見てからノリスがそれに反応できるだけの時間的猶予があれば良かったんですが、急激に強まった雨脚によりインターに履き替えたハミルトンが一気に差を詰めてしまったため、ノリスは身動きが取れなくなってしまったワケですね。それでも、50周目の終わりにピットに入っていれば2位は確保できたんですが、ノリスにとっては2位じゃダメだったというワケです。気持ちはわかるんだけど、正直50周目に雨がさらに強くなってしまった時点で勝負はついちゃってたんですよね……。

もし雨が降らずにドライのままだったら勝てていた、というノリスですが、たしかにハミルトンが彼のDRSゾーンに入りかけてからがむしろノリスの真骨頂だった気もします。ハミルトンが追いつくまでのペースがかなり速かったので楽に抜けちゃうかな、と思ったりもしましたが、ストレートに強みを持つマクラーレンのマシンと、それを熟知しているノリスの走りは簡単にオーバーテイクできるものではありませんでしたね。正直、雨が降らないまま二人の勝負を最後まで見たかった気もします。

今回のハミルトンの勝利はキャリア通算100勝目となる記念すべき勝利でもあったワケですが、ノリスの走りが印象的すぎたおかげでちょっとその記録のインパクトが薄れてしまった感もあります。いやとんでもない記録なのは間違いないんですけど。ていうか、イギリス以来勝利が無かったので「あ、そうかまだ達成していなかったんだっけ」という感じでもありました。

ドライバーによって分かれた判断

雨に対する判断は同じチーム内でも分かれたりしていて、レッドブルはフェルスタッペンが的確なタイミングでのタイヤ交換を行って大きく順位を上げたのに対し、ペレスはステイアウトを選択して順位を9位まで落とす格好に。

メルセデスはハミルトンがチームからのピット指示を一度はスルーしていた一方で、47周目の終わりにピットに入ったボタスはもっと早い段階でインターへの交換を望んでいたみたいですね。ただ、ピットの準備ができていなかったので入れなかったと。

Then the rain arrived, I wanted to stop one lap earlier but the team wasn’t quite ready, but we were still one of the first cars to stop, which was good.

via: Valtteri Bottas: What the teams said - Race day in Russia

ボタスは中段に埋もれて苦しんでいたので、霧雨が降ってきた時点でギャンブルに出たかったんでしょうね。ただ、フェルスタッペンに言わせれば早く動きすぎてもタイヤが壊れていただろう、とのコトだったので、結果的にボタスのピットタイミングはあれで正解だったのかも。ペレスより上の順位でポイントゲットできたワケですしねえ。

フェラーリサインツがフェルスタッペンと同じタイミングでピットに入って表彰台をもぎ取った一方で、ルクレールはなぜかファイナルラップ手前までドライタイヤで走り続けてしまい15位まで転落。なぜそこまで引っ張ったのか……(インターに交換したタイミングは一番遅かった)。

一方でアルファタウリは雨が降ってきてもガスリーはステイアウト、角田はソフトタイヤにスイッチするというドライコンディションに全振りしたギャンブルに打って出たんですが、結果は惨敗。雨が降ってきた時点で2台ともポイント圏外だったので、周りと逆をやることに賭けたんでしょうけども……。特にガスリーにとっては、ペースを持っていただけに予選・決勝とフラストレーションの溜まるレースだったでしょうね。

最初のタイヤ交換まではラッセルが3番手をキープして後方を抑え込んでいたので、中段が密集したままレースが展開したのも今回のレースの難しさではありましたね。逆にいうと、ラッセルはよくあのマシンで3番手を守っていたなあ、と思ったりもするんですけど。フェルスタッペンはスタートから履いていたハードタイヤが思いの外早くダメになっちゃったもんだから、タイヤ交換後に集団の真っ只中に捕まって苦労したりしてましたし。あの雨が無かったらフェルスタッペンにとっては残念なレースだったハズなんですよねえ。