大須は萌えているか?

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F1[22] ハンガリーGP 決勝

私は別にフェラーリファンというワケでは無いんですが、それでもフェラーリに文句を言いたくなるような内容でした。……というワケで、F1ハンガリーGP決勝のお話。

鍵を握ったハードタイヤ

今回のレースはハードタイヤが鍵を握っていた感じでしたね。いかにそれを上手く使いこなすか、という意味ではなく、いかにそれを使わないようにするか、という意味において。

もともと、レース前のタイヤ戦略予想ではソフト⇛ミディアム⇛ミディアムという2ストップ作戦が最速とされていました。ミディアム⇛ハードというのもアリだけど、ハードの性能に不安があるというコトで。ただ、それは金曜日のコンディション下でのロングランにおいて、スライドや摩耗が激しめだったから、という理由によるものでした。

The teams have been caught out a little bit this weekend after struggling with the hard compound, as it was sliding and wearing in hot conditions on Friday, making it comfortably slower than the medium and soft. The upshot of that is the fact that a one-stop strategy is suddenly much harder to execute without the hard, making the theoretical quickest strategy a two-stop.

via: STRATEGY GUIDE: What are the possible race strategies for the 2022 Hungarian Grand Prix? | Formula 1®

ただし、金曜日は路面温度が50℃を超えるような暑いコンディションであり、一方で日曜日は少し雨がパラつく涼しいコンディション。状況が全然違ったんですよね。土曜日はFP3がウェットコンディションだったこともあり、路面温度が低い状態でのドライ路面のロングランデータが無い状態。

後方からのスタートとなるレッドブルは当初ハードタイヤでスタートしてスティントを長く取り、ピット戦略で順位を上げることを考えていたようですが、レコノサンスラップで中古のソフトを履いてフェルスタッペンらが走行したところ、グリップがかなり低かったため急遽ソフトタイヤスタートに変更。ソフトでもグリップに不安があるのに、ハードなんて履いたらえらいこっちゃ、というワケです。

Yeah, we were planning to start on the Hard tyre, but then I went to the grid on the Soft tyres, and I was already struggling for grip, so I was like ‘no way we’re going to start at the Hards’. So, it’s also credit to the team, because we of course planned the strategy around that, with the Hard tyre, and then we were like okay, we were switching it to a Soft, we had a lot of confidence in just changing it around, then that’s what we did.

via: Max Verstappen : FIA post-race press conference - 2022 Hungarian Grand Prix | Formula 1®

ここでドライバーからのフィードバックを受けて、すかさず事前に立てていたプランを捨てるコトができるというのがレッドブルの強さですよね。この柔軟性。そしてレッドブルはスタートタイヤをソフトにするコトに。

フェルスタッペンのレースエンジニアを務めるジャンピエロ・ランビアーゼはその理由をこう説明した。

「スタートでソフトを履いてしまえば、残りのレースは本命のミディアムだけを使えばいい。でも、もしミディアムでスタートすると、必ずどこかのスティントでソフトを履かなければならなくなり、戦略に柔軟性がなくなってしまう。だから、フェラーリがミディアムを履いてスタートしたときは『やった!!』と思った。だって、彼らはどこかでソフトかハードを履かなければならないことがわかっていたからね」

via: レッドブル&HRC密着:戦略に柔軟性を持たせるべく、ソフトでのスタートを選択。フェルスタッペンも変更を全面的に支持 | F1 | autosport web

ハードが使えないとなるとミディアムとソフトでレースを乗り切る必要がありますが、そうなると2ストップは確定。ソフトを後に残すとなると、タイヤ交換のタイミングはある程度限られてしまう……ということでのソフトスタートだったようですが、これがドンピシャ。

2番手と3番手スタートだったフェラーリはコンサバにミディアムタイヤでのスタートを選択しましたが、この時点ではまだその選択が「決定的な間違い」とまで言うようなものでもありませんでした。結果的に2位表彰台を手に入れたハミルトンだってミディアムスタートだったんだし。

トップ集団のタイヤ交換の流れを追うと、まず16周目にソフトスタートでトップを走っていたラッセルがピットイン。このとき、サインツルクレールはぴったりラッセルを追走している状態でした。その後ろからハミルトンとフェルスタッペンが8~9秒ほどの間隔を開けて走っており(10番手スタートだったフェルスタッペンがこの時点でこのポジションにいるのも驚きなんだけど)、ラッセルと同じ16周目にフェルスタッペンもピットイン。

ラッセルはミディアムを履いてトップのサインツの21秒ほど後方でコースに復帰、フェルスタッペンはそのさらに9秒後方。フェラーリ2台のペースはルクレールのほうが良さげで、サインツにピッタリ張り付く状態。後方からのラッセルのペースが良く、このままだと再びトップに返り咲かれる懸念があったためフェラーリは17周目にサインツをピットに呼び込み、そのすぐ後ろに居たルクレールはステイアウト。ダブルストップできるような間隔でも無いですしね。サインツは2セット目のミディアムを装着。

しかしサインツのストップに少し時間がかかってしまい、コースに復帰したときにはラッセルの2秒後方、間にオコンが挟まってしまう格好に。ルクレールはこのとき23秒台の後半で走っており、周回を重ねたミディアムタイヤの割に悪くないタイムではありましたが、新しいミディアムタイヤを履いているラッセルとフェルスタッペンは23秒台の前半で周回。結局ルクレールラッセルに18秒を切るくらいまで差を詰められた状態で21周目にピットイン、2セット目のミディアムを履いてラッセルの後ろ・サインツの前で復帰。この時点で、フェルスタッペンはフェラーリ勢の4秒後ろくらいまでにじり寄ってきていました。フェルスタッペンのペースが明らかに良かったんですよね。

ルクレールは35周目にラッセルの前に出てリードを広げにかかり、38周目の終わりにラッセル、サインツ、フェルスタッペンの集団に5~7秒の差を付けている状態。そのタイミングでフェルスタッペンが2度めのピットイン、再びミディアムを履いてペレスの後ろでコースに復帰。この時点でルクレールとフェルスタッペンの差は26秒くらいあったワケですが、フェルスタッペンはアウトラップのセクター2だけでルクレールに対して1.3秒くらい速いタイムを刻んでおり、これを警戒したフェラーリはその翌周にルクレールをピットに呼び込むコトに。

2セットのミディアムを使い果たしたフェラーリ、残り周回がまだ31周あることを考えるとソフトタイヤを履くワケにはいかず、必然的にハードタイヤに。ルクレール、2セット目のミディアムはまだ18周しか走っていなかった(最初のセットは21周走行)んですが、フェルスタッペンを意識した結果ハードを使うように誘導されたような格好になりました。このときアルピーヌなどもハードタイヤで走行していましたが思うようにタイムは伸びておらず、それを考えるともっとタイヤ交換を引っ張ってソフトに繋げるという考え方もあったハズですが、フェルスタッペンに対するトラックポジションを守ることを優先したワケですね。

ルクレールと同じタイミングでラッセルもピットに入っていますが、彼はソフトスタートだったので当然のようにまだ1セット残っていたミディアムに交換。ルクレールにハードを履かせた決断について、

フェラーリのマッティア・ビノット代表は、チームのシミュレーションによるとハードタイヤはスティント序盤に温度を上げるのが難しいものの、最終スティントで履くには良いタイヤだったはずなのだという。

「ハードタイヤを装着した時、我々のシミュレーションではウォームアップの2、3周が難しくなる可能性があった」と、ビノットは説明する。

「10~11周はミディアムより遅いが、その後はカムバックしてスティント終盤はより速いはずだった。(フィニッシュまで)30周のスティントだったんだ」

via: フェラーリ、ルクレールのタイヤ戦略を説明「シミュレーションでは、ハードタイヤは良い選択だった」

……というコメントをしているみたいなんですが、そのシミュレーションの精度はそんなにアテにできるものだったのか……?という疑問が。金曜日とは全然違うコンディションなのに。

結果的に、ハードタイヤでタイムが上がらないものだからフェルスタッペンにコース上でオーバーテイクを許すこととなり(前に出たフェルスタッペンが一度スピンして順位を戻すというサービスまでしてくれたのにまた失った)、さらにラッセルにも前に出られてしまってもう一度ピットイン、ソフトタイヤに履き替えるコトに。まあタイヤ交換して15周くらい走ってもミディアム勢よりタイムが劣っており、こりゃアカンというコトでソフトに変えることにしたんでしょうけども……トラックポジションに拘って2セット目のミディアムを早々に放棄したのに、今度はあっさりトラックポジション捨てるのもなんだかなあという感じ。

ルクレールがソフトタイヤに履き替えた時点で残り25周あったので、ソフトならある程度まで挽回できるという考えだったのかもしれませんけど、ピットアウトして6番手でコースに復帰後、1つもポジションを上げられずにレースを終えてしまいました。つまり、単純にポジションを失って終わってしまったんですよね。まあ、ハードのままステイアウトしていたとしても、後ろにいたサインツとハミルトン、ペレスのペースを見るとコース上で抜かれていた公算が大きいようには見えますが。

結局のところ、ハードタイヤにスイッチした時点でルクレールは詰んでいたというコトになっちゃうんですが、スタート直前にコンディションに合わせて柔軟にプランを変更したレッドブルと、事前のシミュレーションを信じてフェルスタッペンのペースに乗せられたままハードにスイッチしてしまったフェラーリ、この差は如何ともし難いですね。せめて「ハードタイヤはやめとこう」という頭になっていれば、フェルスタッペンに対してトラックポジションを失ってでも2セット目のミディアムを引っ張ってソフトに繋げる作戦を採れていたはずで。そしてレッドブル&フェルスタッペンはフェラーリに対して先手先手で動くことによりフェラーリ側に常にプレッシャーをかけ、フェラーリはまんまとそれに乗せられてしまったように見えます。なんとしてもフェルスタッペンの前にいなければ、という気持ちが強すぎたというのもあるのかもしれません。

タイトル争いでフェルスタッペンに大量リードを築かれてしまい、「残りを全部勝つ」という気持ちがさらに裏目に出てリードをますます広げられる……「貧すれば鈍す」という言葉を地で行くようなフェラーリの有様に涙を禁じえません。

メルセデスにとっても良いレース

フェラーリが残念なレースになった一方で、メルセデスにとっては2台ともがフェラーリの前でフィニッシュするという上々の結果になりました。チームとしては図らずもフランスと同じ結果になりましたが、今回はフェラーリが2台とも走っている状態での2-3フィニッシュですしね。ハミルトンはこれで5戦連続の表彰台。チームとしても、この5戦の間ではラッセルのリタイヤが1回あった以外は両ドライバーとも4位以内でフィニッシュしています。この安定感よ(フェラーリが安定してなさすぎともいう)。

一方でフェラーリの方はこの5戦で表彰台がルクレールサインツを足して3回(2勝)、リタイヤ2回(ルクレールサインツ1回ずつ)、あとは4位2回、5位2回、6位1回。全然安定してないですね。これによりコンストラクターズでメルセデスフェラーリとの差を30ポイント差まで縮めてきております。ドライバーズポイントでも、ラッセルはサインツを上回りました(2ポイント差)。なんか、メルセデスフェラーリを射程圏内に捉えつつあるという状況にはちょっと驚きます。マシンの速さはどう考えてもフェラーリのが上だったはずなのに。

まあ、メルセデスもここんとこ好調とはいえ、マシンが速くなっている要因がチーム側でも把握しきれていないっていうのがちょっと怖いところではあります。それってちょっとした偶然で成績が上向いているだけっていう話になっちゃいますので。今回のレースも、「冷え性」とされているメルセデスのマシンがこの低い路面温度でここまでコンスタントに速かったというのはなんだか不思議な感じすらしました。ただ、マシンの調子が上向いてきているのもまた間違いないところではあると思うので、後半戦はフェラーリレッドブルにガンガン絡んでいく走りができることを期待しております。

……にしても、今回はラッセルがポールスタートだったのに、最終的にはハミルトンが上手くレースをまとめて2位フィニッシュに持ち込んだのはワールドチャンピオンの面目躍如といったところでしょうか。2セット目のミディアムを引っ張ってソフトに替える、というのは結果的にサインツと同じような作戦になりましたが、最後のソフトに履き替えてからがまた良かったんですよね。逆にサインツはいまいちタイムが伸びず、ハミルトンにやられてしまった格好。これはタイヤのコンパウンド以前に、フェラーリのマシンとセットアップがこのコンディションにマッチしていなかったというコトでもあるのか……?

アロンソアストンマーチン

……なんだか文章が無駄に長くなってしまった気がする。

あと今回のレースとは直接関係ありませんが、アロンソベッテルの後釜としてアストンマーチンに加入するっていう発表はちょっと驚きました。

【速報】フェルナンド・アロンソ、アストンマーチンに電撃加入! 引退ベッテルの後任として複数年契約

そもそもこの人、数日前にはアルピーヌとの契約更新を匂わせるような発言していたわけですよね?

アロンソ「アルピーヌとの話は10分もあれば終わる」アストンマーチン移籍には興味なし

なんとも人を食ったような話ですが、しかし純粋にチームの立ち位置というのを考えてみても不思議な話ではあります。今年のマシンの速さで言えば、どう考えてもアルピーヌのほうが速いわけですから。大きなポイントは、アストンマーチンと複数年の契約を結んだらしいというコトですかね。アルピーヌはおそらく2023年についても単年契約を考えていたのではないかと思いますが、アロンソ自身はまだまだF1を続けるつもりなのでしょう。

複数年契約に加えて契約金もそれなりにはずんでいるんでしょうし、チーム全体のリソースも着々と強化している点などもアピールしてアロンソの心を動かしたのかなあ……と想像。アルピーヌは良くも悪くも今くらいのポジションが限界にも見え、チームとしての伸びしろはアストンマーチンのがあるのはそうなのかもしれませんし。それに今年はマシンの信頼性の問題もあってランキングではオコンに後れを取るわ、そのオコンはチームメイト相手でもえげつないブロックを仕掛けてくるわ、みたいなストレスもあったのかもしれません(?)。

しかし、ベッテルが抜けると思ったらすかさずアロンソを引き入れてくる、なんてストロールパパは確かにビジネスマンとしては相当な剛腕なんだろうな、と唸らされてしまいます。あとはちゃんとそれに見合った成績が残せるマシンが用意できるかどうかですが……。