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F1[13] イギリスGP ピレリタイヤはなぜ爆発したのか

ピレリタイヤ問題がアレなので、決勝の話は後回しにしてまずはそっちの話を。ていうか、タイヤ問題で唖然としちゃって決勝の流れがあんま頭に残ってません。

ピレリ爆発した

文字通り、ピレリタイヤが爆発した週末となりました。

いやね、予選前のフリー走行3回目をちらっと見ていたときに、マクラーレンのペレスのマシンのタイヤが「爆発」したんですよね。左リヤタイヤが。バーストというより爆発。このときのピレリのコメントではコース上のデブリ(パーツ等の破片)か縁石がタイヤのサイドウォールをカットしたものとされ(⇒ 【STINGER】ピレリ・リリース / 2013年イギリスグランプリ 予選|STINGER / 独自の視点でF1ニュースを発信)、その後予選ではタイヤに関する問題は起きなかったため、特に問題ないのかなと思ってたんですよ。

しかし、これが決勝になったら次から次へとタイヤが爆発。しかもほぼ左リヤタイヤに集中。ハミルトン、マッサ、ヴェルニュ、そしてFP3に引き続きペレスも犠牲になる格好に。グティエレスもフロントタイヤに問題が発生したみたいですが、こちらは他のドライバーとはまた違う原因なのかも。さすがにこれだけの台数に問題が出たとなるとタイヤの構造を疑わざるを得ません。

ピレリのデラミネーション問題とテストゲート

ここに至る経緯として、まず今年のピレリタイヤが従来から指摘されていた「デラミネーション」と呼ばれる問題を抱えていたコトがあります。これ日本語だと「層間剥離」とかっていうらしいですが、タイヤのトレッド面(路面に接触している面)がまさに剥がれてしまうという現象。よくいう「デグラデーション」とは走行し続けるコトでトレッド面が摩耗し性能が劣化する現象を指し、これは起こって当然の現象。しかし、デラミネーションは単なる摩耗とは違いタイヤの接地している面が剥がれるため、急激な性能低下を招くというワケです。

このデラミネーション問題について、スペインGP後ピレリは「デラミネーションが起きたのはマシンがデブリを踏んづけたせいだし、タイヤの安全性にただちに問題はありません」的な主張をし(⇒ デラミネーションはデブリによるオーバーヒートが原因 (オートスポーツweb) - Yahoo!ニュース)、しかしながら問題の解決はすると宣言。んでもって、スペインGP後メルセデスと「こっそり」タイヤテストを行い、問題視されたワケですね(⇒ メルセデスとピレリのF1タイヤ・テストに対する裁定: FIA公式プレスリリース : F1通信)。

ピレリはかねてからタイヤテストの機会の少なさに不満を燻らせており、今回の裁定にも納得できてない様子。ピレリとしては、レースを盛り上げるためにデグラデーションの性能を調整しろと運営側から命じられてその通りにタイヤを作っているという認識でしょうから。なので、この件に関する裁定が下される前からF1撤退もちらつかせる状態になっておりました。

デラミネーション対策

んで、ピレリはデラミネーション対策としてタイヤの内部構造(ベルト素材)の変更を考えていたんですが、タイヤの構造変更には全チームの同意が必要。デラミネーション自体は安全性に直結する問題では無いため(ピレリ自身がそう主張してるし)、緊急対策が必要な案件とは見なされなかったんですね。そしてロータスやフォースインディアはタイヤ構造の変更に反対。だって今のタイヤを上手く使えているから。

そんなワケでピレリはカナダGPで新構造のタイヤを投入したかったものの、これを断念(⇒ ピレリ、F1タイヤ変更を中止 | トップニュース|F1 車 映画|2013Live速報)。で、イギリスGPでも構造の変更はできなかったため、とりあえずの対策としてトレッド面の接着方法を新しくしたそうな。そして結果はご覧の通り。ただし、レース後ピレリのポール・ヘムベリーはこの接着方式の変更は事故と関係ないと断言してます。

現時点では、このインシデントを完全に調査して分析するまではこれ以上のことは言えない。調査・分析が最優先だ。しかし、このレースで導入した新しい接着プロセスは、今日のタイヤ故障の原因から除外できる

via: ピレリ「この状況を非常に深刻に受け止めている」: F1イギリスGP : F1通信

なぜ調査・分析が必要としながらそこまでキッパリ言えるのかようわかりませんが……。

今後の対応は?

ともあれ、問題は次のレース以降のタイヤをどうするかです。原因不明の爆発するようなタイヤを使うなんてのはあり得ない。しかし、次のドイツGPはイギリスから連続開催となるため、今週末です。レッドブルクリスチャン・ホーナーは2012年仕様のタイヤに戻すという提案をしていますが(⇒ ホーナー 2012年用タイヤの再使用を提案 - GPUpdate.net)、それもやむなしって感じはしますね。

FIA会長のジャン・トッドピレリをSWC(スポーティング・ワーキング・コミッティ)という会合へ出席するように求めたというコトですが(⇒ トッド ピレリをSWCの会議に召喚 - GPUpdate.net)、これが開催されるのが水曜日。しかし、その前に結論出さないとドイツGPには間に合わないんじゃないですかね……?あるいはせめてイギリスGPより前のタイヤに戻せという気がしますが、新工程に問題は無いというピレリの主張を真に受けるなら、カナダGP以前の仕様でも問題を抱えている可能性があるコトになります。そうなるとやっぱり2012年仕様に戻すしか……。

こうしたタイヤの問題というと、2005年のインディアナポリスで行われたアメリカGPでミシュランタイヤがオーバルセクションでバーストした問題を思い出しますが、あれはまだオーバルセクション特有の問題という範囲で収まっていたんですよね。しかし今回の問題は、どうもそれよりも広範な問題っぽい。ていうかまだ原因不明だし。

タイヤが突然バーストするなんてのは極めて危険な事象であり、マシンがどこにすっ飛んでいくかわからないし、ちぎれ飛んだタイヤの破片が後ろのドライバーを直撃する可能性だってあります。イギリスでそういった重大事故が起きなかったのはホントにラッキーとしか言い様が無い。レースディレクターのチャーリー・ホワイティングはレースを赤旗中断するコトも考えていたそうですが(⇒ ホワイティング 赤旗中断を検討していた - GPUpdate.net)、そりゃそうですよ。ていうか、中断すべきと思いましたもん。

ただ今回の件、ピレリにはピレリの主張があるハズです。テストの機会が不足している上にタイヤ構造の変更もスムーズにできない状況で、トラブルが起きたら一斉にタイヤメーカーのせいにされるのは納得できないんじゃないかな。正直私も「ピレリひどすぎる」と思っちゃいましたけど。世界中で放送されているF1においてピレリタイヤのバーストが繰り返し映し出されたんですから、宣伝どころか評判ガタ落ちですわな。

この一件をもって、いよいよピレリタイヤの撤退が秒読み段階に入っちゃった気がするのは気のせいでしょうか。だってもう企業イメージに寄与するどころかマイナスになっちゃってるし……。そうなると、どこが代わりにタイヤ供給すんのよ?って話になるんですけど。

まずは今週、どういう話の流れになるのか注目ですね。

その後の話 ⇒ F1[13] なんかしっくりこないピレリの釈明