大須は萌えているか?

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「SUZUKA Sound of ENGINE 2017」を見物してきた(前編)

ウダウダしてたらすっかり書きそびれていたのですが、先日の土曜日、鈴鹿サーキットで開催されたRICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2017を見物してきました。今年で3回目となるイベントですが、ちゃんと昨年・一昨年も見物しております。

このイベント、毎年土日の2日間開催されているんですが、私は毎回土曜日に行っています。入場券自体は土日通し券なので、その気になれば2日間とも行けるんですが、週末2連チャンで鈴鹿まで行くと体力を使い果たしてしまい、月曜の仕事がめっちゃかったるくなるので……。

で、なぜかこのイベント、土曜日の天気があまり良く無いのです。1年目は曇り、2年目は午前中雨・午後曇り。しかも日曜は良い天気だったのがまた。さすがに今年は大丈夫だろうと信じてたのですが、今までで一番ヒドい雨でした

雨の中、さっそくピットまでドナドナされてきたマシンも。なんでしょうかこの侘しさは。

ヒストリックレーシングカーが走るというこのイベントの性質上、雨が降ってしまうと走れないクルマも結構居るワケでして、本物のレース観戦時以上に晴れて欲しいイベントなんですよね、コレ。なんなんだろうなこの土曜日の悪天候率は……。そして日曜はまたしても晴れてたようです。

今年も例年同様ホスピタリティラウンジのチケットを購入したんですが、隣の部屋が冠スポンサーでもあるリシャール・ミルのオーナー専用ラウンジとなっており、ハイソな雰囲気がプンプンしておりました。このオーナーさん達が自らの愛車でサーキットを走る時間も設けられているんですが、1千万円の腕時計してマクラーレンだのランボルギーニだのを乗り回せる人が世の中には結構いらっしゃるという現実を目の当たりにするのは、この世の格差というモノを身をもって体験する良い機会であります。

パドックにはロールスロイスベントレーまでどーんと展示されてたりするんですが、その場で「なかなか良いねコレ、1台もらおうか」なんて言っちゃう人も居たりするんでしょうか。

あー殲滅したい。

ただ、マクラーレン675LTだのP1だのが雨の中さらりと並べられてたのには少々驚きましたが。マフラーの位置すげえことになってるなこのクルマ。

今回の目玉は、今年初めて日本に招待されたMasters Historic Formula 1のデモ走行でしょう。詳細はリンク先を見ていただくとして、実際にF1の前座などでガチレースをしているマシンがやってくるというのは興味深いところ。この雨でどれくらい走ってくれるのか少々不安でしたが、さすが世界各地で場数を踏んでいる人たちだけあって、雨の中でもしっかり走行してくれました。

中でもめっちゃ踏んでくれていたのが、マキF101C!

いやまさか、かの「マキF1」を目の前で拝める日が来るとは……。

「マキF1」については話すと長くなってしまうので割愛しますが、1974年に突如として世に現れた日本のF1コンストラクターであり、チームスタッフは全員偽名(唯一本名だったのはドライバーのホーデン・ガンレイ)、当初チームのメインスポンサーだったのが「エムズブレイン」なるネズミ講をやっていた会社で、「マキ」というのはその会社の社長の名前だった……という、もう今のF1からだと考えられないレベルで胡散臭いチームであります。

このF101Cは1974年に作られたF101を75年向けに大改造したモデルで、以前読んだRacing On誌(No.467)によれば4台製作され、3台が現存しているとのこと(うち1台は国内にある模様)。今回走ったのはシャシーナンバー002という個体だそうなので、Racing Onに掲載されていたマシンそのものですな。

Racing on No.467
リエーター情報なし
三栄書房

マキは74年に2戦、75年に4戦エントリーしたものの、いずれも決勝の出走はできず。76年にもニューカーであるF102Aを製作して富士のF1世界選手権イン・ジャパンにエントリーしたものの、やはり予選突破ならず。そしてそのままマキは活動終了。

そんなマキF1が、雨中の鈴鹿サーキットをすんげー速さで突っ走ってるって、なにか白昼夢でも見ているような気分でした。シュールすぎる。

そしてさらに、そこにコジマKE007まで出てきたのだからもう。

こちらはマスターズ参戦車両では無く、以前に国内でレストアされたマシンですね。ヨーロッパに乗り込んでいったマキとは異なり、こちらは1976年の「富士のF1」にターゲットを絞って製作された車両。それが奏功してか、予選では長谷見昌弘のドライブであわやポールポジションかというセクタータイムを記録しつつも、土壇場でサスペンションが壊れてクラッシュしてしまったという。

しかしさらにスゴイのが、モノコックまで壊れてしまったマシンを、あらゆる所から人と物をかき集めて決勝までにもう一度作り直してしまったという。当然ながら、バランスなどはメチャクチャでまともに走れる状態では無かったようですが、必死の修復を行ってくれたスタッフのコトを思いながら長谷見は決勝を完走。日本のプライベーターが、「ひょっとしたらポール獲れるかも」なんてところまで戦えたって、夢のある時代だったんだなぁと。

ただ、コジマの方は午後のセッションで一度コースインしてくれたんですけど、マシンの調子が思わしくなかったようですぐにピットインしてしまいました。残念。

コジマのF1マシン製作には、マキのプロジェクトに携わっていた人も複数関わっていたりして、そういう意味では「日の丸F1」の兄弟みたいな関係でもあるんですよね。そんな2台が見られただけでも、非常に幸せなコトでありました。

なお、上に貼ったRacing On No.467号にはコジマのエピソードもあれこれ載っているので、マキとコジマについて詳しく知りたい方にはオススメでございます。

あと、今回のホスピタリティラウンジの特典として、先着申し込み形式で「バックヤードツアー」なるものも行われてました。なんとなく参加してみたんですけども、鈴鹿サーキットのコントロールルームと計時室の見学ができて、

それからマスターズF1のピットガレージ内も見物できるというもの。

マスターズのクルマ、よく見るとフレームや各種ステー、サスペンションなんかは真新しいものに交換されているし、テールランプは視認性の良いLEDのものが取り付けられたりしてて、見た目はヒストリックカーなんですが、ちゃんと「実戦を戦うマシン」として整備されているのが印象的でした。これ、現役のレーシングカーや。

なお、ガレージ内に居たベネトン……じゃなくてティレル012は、テール部分の写真を撮っていたら目の前でエンジン始動をかまされて、耳がおかしくなるかと……。

なんか90年代からF1見始めた身としては、フォード・コスワースDFV(DFY)ってF1のエンジンとしては「しょぼい」部類かなーとか思っちゃうんですが、こうして目の前でエキゾースト聞かされると仰け反りますわ。

あとガレージ内に居たのは先ほど紹介したマキF101C、

ブラバムBT37(グラハム・ヒルなんかがドライブしてた)、

マーチ761(なぜかタイヤが草だらけだった)、

といったところ。Betaカラーのマーチといえば、かの「モンツァゴリラ」ヴィットリオ・ブランビラがドライブしていたマシンですね。カラーリング違いで、ロニー・ピーターソンもドライブしておりますが。この頃のピーターソン、ロータスを飛び出してマーチやティレルで戦ったもののパッとせず、結局またロータスに戻るっていうあたり、なんかアロンソと通じるものを感じたりしないでもありません。

しかしなんかこうしてみると、この見学したガレージって妙に通好みっていうか、マニアックなマシンが揃っているね……?

……残りは次回に続く。