大須は萌えているか?

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F1[19] オーストリアGP 決勝

えー……びっくりしました。久しぶりに胸が熱くなるレースでしたね、F1オーストリアGP決勝。

まさかのフェルスタッペン

つい先日、このブログに書いたフランスGP決勝の感想記事にて、私は以下のように述べました。

にしても、メルセデスはこれで開幕以来8連勝、年またぎで数えると10連勝になってしまいました。チームとしての最多連勝記録は、かの1988年、シーズン「16戦15勝」を記録したマクラーレン・ホンダの11連勝。次勝ったら並んじゃうんですよね。次のレースはレッドブルの地元オーストリア、ここでホンダPUのマシンがメルセデスの連勝記録を止めるコトができたらドラマチックなんでしょうけど、そんな上手くもいかないよねえきっと……?

via: F1[19] フランスGP 決勝 - 大須は萌えているか?

上手くいってしまいました。

いやでもさー、今年のレッドブルの立ち位置的に、メルセデスフェラーリとの真っ向勝負は厳しいじゃないですかー。確かに昨年もレッドブルリンクはフェルスタッペンが制していますけど、だって昨年はメルセデスが2台ともメカニカルトラブルでリタイヤするっていう天変地異が起きた結果であってさー。

予選の結果、フェルスタッペンはフロントロウスタートという好位置を得ても居ましたが、それでも勝てるとは思ってませんでした。ルクレールの速さは決勝でも揺るがなさそうだったし、それに後ろのメルセデス2台が黙っているとも思えません。なにせ年またぎで10連勝しているチームですし。それにまだ、PUの完成度ではフェラーリメルセデスに追いつけていないホンダが、レッドブルリンクのようなコースで勝負するのは辛かろうと。

そしてスタートでフェルスタッペンが致命的なレベルのスタート失敗をしたのを見て、とりあえずこれでフェルスタッペン優勝の目は完全に消えたな、と思ったワケです。一瞬、8番手まで順位を落としましたからね。

しかし今回のフェルスタッペン、決勝のレースペースが高いレベルで安定してた。フェラーリの2台とメルセデスのボタスが21~22周目にピットインしたのを尻目にスタートタイヤのまま周回を重ね、さらに先頭を行くハミルトンがピットに入った次の周、31周目にピットイン。ハードタイヤに履き替えつつペースを上げられないハミルトンの前に出て、この第二スティントの速くて安定したペースがレースの行方を決めましたね。

もちろん、このペースの良さはルクレールやボタスよりタイヤが10周程度若かったというのもあったでしょうし、そういう意味では第一スティントをペース保ちながらあれだけ引っ張った時点で勝利への道筋が見えていたワケですね。

レッドブルがこれほど良いペースを維持出来たのは、「環境をえり好みしない」マシンだったからと言うコトもできそうです。最強のハズのメルセデスのマシンは熱対策が不十分だったのか、2台揃ってオーバーヒート気味になりペースを上げられず、一方フェラーリはハードタイヤとのマッチングがイマイチだったようで、ベッテルはハミルトンに順位を譲るのも厭わず、余分にピットインしてハードからソフトタイヤに交換する有様。

一方、レッドブルのマシンはミディアムでもハードでも一貫して速かったし、ホンダPUは熱にも負けず、むしろ「エンジンモード11を使え」みたいな無線も飛んで、まさに「ガンガンいこうぜ」状態。これにより、ライバルのトラブルやセーフティカー頼みのラッキーな展開ではなく、コース上でメルセデスフェラーリもブチ抜いての優勝が達成できたワケですね。

もちろん、この優勝はフェルスタッペンという天才ドライバーの実力があってこそ、というのも忘れてはいけませんが。フェルスタッペンくらい「強い」ドライバーじゃ無ければ、あるいはルクレールが最後まで逃げ切っていたかもしれない。パワーで劣るレッドブル・ホンダが直線で逃げるフェラーリに勝負を仕掛けるとしたら、ターン1の脱出速度をアドバンテージにしてDRSを効かせつつ、スリップに入り込んでからのターン3の飛び込みしかない……!という状況で、一度はルクレールに仕掛けたものの立ち上がりで横に並ばれ、再度前に出られてしまったワケじゃないですか。

つまり、それだけ低速コーナーからのフェラーリの立ち上がり加速は抜群に良い。かといって、ターン4で再度仕掛けようにもインサイドを塞がれたら仕掛けようが無い(それによりターン4の脱出速度は遅くなるが、ターン6までの距離は短く横に並ばれる心配はない)。そうなるとターン3の立ち上がりで、ルクレールに一瞬アクセル踏ませないように仕向けるのが一番確実なんですよね。んで、フェルスタッペンは次の周、わずかにターンインのタイミングを遅らせた。それによってフェルスタッペンのラインはややワイド気味になり、結果としてルクレールはフェルスタッペンのマシンが邪魔でアクセルを踏めるタイミングが遅くなるという。

これを露骨にやり過ぎると、2016年のロズベルグになります(しかも失敗している)。

Rosberg And Hamilton Clash On Last Lap | Austrian Grand Prix 2016 - YouTube

フェルスタッペンはその辺上手くやったというか、アウトとセーフのギリギリのラインを突いてきたなー、という感じ。例えばコレ、わずかでもルクレールの側にステアリング切ってたりしたら、ペナルティ取られてたと思うんですよね。ただ、これくらいの勢いでいかないと、残りの周回でルクレールを仕留め切れていたとは思えないのです。彼も若いのに恐ろしく上手いドライバーですし。仮に5秒ペナ喰らっても2位という結果は同じ、それならイッタレ!という判断はレーシングドライバーとして非常に正しい。

ともあれホンダ「PU」の初優勝、おめでとうございます。

しかし、ルクレールも2度に渡って初優勝がその手からこぼれ落ちてしまったにも関わらず、レース終了後には切り替えてフェルスタッペンを祝福するツイートしている辺り、つくづく只者ではありませんねえ。人間として出来過ぎている……。

ルクレールの初優勝も、今年中には見られるものと期待しております。フェルスタッペンと共に、ハミルトンやベッテルが退いたあとのF1を牽引するのは間違い無いドライバーですしね。

そのほか

フェルスタッペンのことで長くなりすぎた。てか、チームメイトのガスリーも7位フィニッシュはしているんですけど、あまりに影が薄くてホント心配です。予選でもQ3でアタックミスしたとか言ってましたけど、決勝は第二スティントで履き替えたばかりのハードタイヤをすぐダメにしてしまい、ペースを上げられなかったとのコトで……。いずれも自らのミスが招いた結果ですし、フェルスタッペンと比べてしまうとかなり寂しい結果と言わざるを得ません。このままだと、来季はちょっと厳しそうな……。

ポイント圏内で何気にスゴイのが、またマクラーレンがダブル入賞してるんですよね。予選から一貫して好調だったノリスは頷けるところなんですが、19番手スタートのサインツまで8位入賞しているのが。彼も第一スティントを引っ張りまくる作戦(41周目まで引っ張った)が功を奏した格好ですが、こちらもハードに履き替えてからのペースが素晴らしかった。

なお、一番ピットを引っ張ったのはルノーのリカルドですが(46周目)、これはちょっと引っ張り過ぎましたね。ソフトタイヤに交換したかったからこれだけ引っ張ったようですが、ピットアウト後なかなかストロールの前に出られずスタックする格好になってしまい、新品ソフトの美味しいところを活かせませんでした。ルノーマクラーレンの明暗が分かれた格好ですねえ。

それからアルファロメオもダブル入賞。ジョビナッツィ、F1初入賞ですね。そしてなぜか、ボスに髪の毛を切られてしまうという。(ポイント獲ったら切らせるって約束してたらしい)

一方で、予選で5番手タイムを叩き出して叫んでいたマグヌッセンが19位に轟沈しており、これはこれで笑え……気の毒ですね。ていうか、イマドキスタート位置をはみ出してペナルティ喰らうってあんた……。

ハースのマシン自体にもまるで速さが無く、「予選だけ速いハース」がまた際立ってしまった感があります。てか、マグヌッセンの予選5位も正直出来過ぎだった感は否めず、予選自体のパフォーマンスもカナダGP以降低迷傾向にありますしね。

コンストラクターのBest of the Restはマクラーレンがその地位を盤石なものにしつつあり、その次に単独でルノー、その後ろにアルファロメオ、レーシングポイント、トロロッソ、ハースが団子になっている感じ。ウィリアムズは……なにも言うまい。ホンダ勢としてトロロッソにも頑張って欲しいところですが、戦略的PU交換やら、予選でのちょっとした運の悪さで少しポイントから離れてしまってますね。イギリスGPではトロロッソ含めて、ホンダ勢がどこまでいけるか気になるところです。