大須は萌えているか?

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『JKハルは異世界で娼婦になった』を読んだ(ネタバレ無し)

先日読んでみた小説。

JKハルは異世界で娼婦になった
リエーター情報なし
早川書房

元々は「小説家になろう」派生サイトの「ムーンライトノベルズ」(女性向け18禁小説サイト、リンクは自粛)に投稿されていた作品みたいですが、しばらく前にTwitterでちらほら名前を見かけた記憶はありました。それが早川書房から書籍化するって記事を見かけて興味を持ち、Kindle版で読んでみた次第。

早川書房が「ネット発の官能小説」を書籍化したワケ (1/3) - ITmedia ビジネスオンライン

掲載されているサイトが18禁サイトだし、上記の記事でも「官能小説」って書かれてますけど、書籍としては18禁の扱いでは無かったりします。まぁ実際ベッドシーンの描写はたびたび出てくるし、このブログでそのまま書くのはマズそうな単語がポンポン出てきたりはするんですが、主人公であり異世界で娼婦として働く「JK」・ハルの一人称で語られる文章は非常に冷静なので、正直エロさは全然ありません。男向けエロ小説やエロゲーにあるようなウェットな描写は無く、淡々と行為を描いている印象。挿絵も無いので、通勤途中の電車内でも読み進めるコトが可能。

私はいわゆる「なろう系小説」と呼ばれる作品は全然といっていいレベルで読んだコトないんですが、「異世界転生チートもの」というのがひとつのテンプレになっている(そしてそれが嘲笑の対象になっている)というのは耳にしたコトあります。

んで、この小説はその「異世界転生チートもの」のテンプレに乗りつつ、そのテンプレをどこか皮肉っているような印象も受けます。その作風はなかなか面白いんですが、ただ物語の「仕掛け」がわりと見え見えなのが残念ではありました。その「仕掛け」が明らかになって、ハルが動くシーンがこの物語最大の見せ場なのだと思いますが、「まぁ、そうなるな」っていう印象だったので。「銀髪おじさん」の正体もわかりやすいし。

あと、この小説がずっとハルの目線を通して語られる作品であり、ハルというキャラクターの魅力が作品の魅力に直結しているワケですが、そのハルの過去=異世界に転生してくる前の話がほとんど語られていないのは残念でした。なんていうかこのハルってコ、ものすごい「プロ意識」高いんですよね。「異世界で娼婦として生きていく」ってそんな簡単に割り切れる話じゃ無いと思うんですけど、ハルはそれをスルッと受け入れちゃってる感じするし。それは何故?というのが気になったんですが、その疑問が解消しないまま終わっちゃった感じ。少しだけ異世界に来る前のコトについて触れている箇所もあるんですけど、ちょっと断片的すぎるかなぁ。

まぁ、この作品で描かれている異世界は男尊女卑の激しい社会として描かれていますけど、これは今の日本社会をデフォルメして描いた姿と見做すこともでき、現実の女性も多かれ少なかれ男優位の社会での生存戦略を考えながら生きてるんだから、このハルの持っているような意識だってそんな特殊なもんじゃない……という見方もできるのかも知れませんけど。

……ただ、そう考えると男としてはちょっと冷や汗かいちゃうんですけどね?