9月の2度目の三連休のときに出かけてきたお話。例によって『駅メモ!』と鉄印目当ての乗り鉄旅となります。
エリア的に、ちょっと前に行ったところとモロ被りじゃん、という説もあるんですが、前回乗れていない路線を乗りつぶしていくのが目的。
1日目
本来ならぼちぼち涼しくなってきてもいい時期ですが、温暖化によって四季が失われつつあるのか相変わらずクソ暑い日々が続き、「それなら今のうちにもう一度雪国のほうへ行っておくか」と思い立ったのでした。そんなワケで、名古屋駅から特急「しなの」に乗り込みます(『駅メモ!』始めてから4度目の乗車)。
今回は篠ノ井駅で下車し、しなの鉄道に乗り換えます。長野県の駅は大部分はアクセスできているんですが、しなの鉄道の篠ノ井〜上田間、それに上田で接続している上田電鉄は未アクセスだったので、まずはこれらの路線を乗ってしまおうと。
ちなみに今回は、土日の間はJR東日本の「週末パス」を利用しました。
西は熱海、北は仙台のちょい上あたりまでがフリーエリアに含まれ、かつエリア内の第三セクターなども対象に含まれており、特急券を買い足せば新幹線などにも乗れるというなかなか素敵な切符。使用できるのは土休日の連続する2日間となっており、GW・お盆・年末年始の大型連休期間中は利用不可という制限つきではありますが、8,880円という値段は悪くないように思います。
名古屋駅では発券できないので、篠ノ井で一度改札の外に出て発券する必要はありましたけどね。
しなの鉄道は以前にも小諸〜軽井沢の移動で使ってはいるんですが、そのときはわりと新しい車両だったのに対し、今回はなんか昔懐かしい感じのヤツが来ました。
さらに驚きだったのが、これドアを開けるときに手動で開ける必要があったこと。手動といってもボタンで開けるワケではなく、文字通り引き戸のように手で開ける形。閉じるのは自動で閉じるみたいですが……。こういう方式のドアって、しなの鉄道以外にもあるんだろうか。
上田駅で上田電鉄別所線に乗り換え。「別所線」という名前がついてますが、上田電鉄にはこの路線しか無い模様。昔は他にも複数の路線があったみたいですね。
終点の別所温泉駅はなかなか味のある佇まい……なんですが、すぐに折り返します。
しなの鉄道で長野駅まで行き、そこから北しなの線に乗り換えて直江津方面へ。この道中で『駅メモ!』的には長野県コンプリート。途中の妙高高原でえちごトキめき鉄道妙高はねうまラインに乗り換えます。
そして、この週末の大きな懸案事項として、ヤバめな雨雲が日本海側を中心に押し寄せてきているというのがありました。直江津に向かっている途中に雨が振り始めてきて、そのとき雨雲レーダーを確認してみたらこんな感じ↓。
とりあえず自分が乗っている列車は定時運行されていましたが、先のことを思うとヒヤヒヤ。
妙高高原からの道中で特徴的だったのは二本木駅で、スイッチバック構造になっている駅なんですよね。ただ、自分の中ではスイッチバックっていうとYやZの形をしたもの、というイメージがあるんですが(飯能駅とか出雲坂根駅とか)、ここは本線はまっすぐ走っていて、そこから逸れる形で駅があるんですね。
なので駅を通過する列車は方向を変えることなく進むし、停車する列車は一度本線から逸れて、そこからまたバックして(?)本線に戻り、また本来の方向へ進んでいく形になると。あと、バックするときには運転士さんは逆方向の運転台に移動せずにいたのもちょっと驚きでした。
ていうか、特急しなので通り過ぎていた姨捨駅も同じ構造だというコトで、これ特急で通過していたから気づいていなかったんですね。ひとつ勉強になりました。
直江津からは北越急行ほくほく線に乗り換え。この日の宿は柏崎に取っていたので、十日町方面に行くこの列車は完全に方向が違うのですが、『駅メモ!』でほくほく線の駅にまだアクセスできていなかったのと、鉄印をもらいにいくために乗らざるを得ない。
このほくほく線もなかなか面白い路線で、最初から特急列車の乗り入れを想定しての高規格路線として作られたおかげで、田んぼの多い田舎風景の中を一直線の高架線とトンネルが貫いている感じになっており、そんじょそこらの田舎の第三セクターとは一線を画す存在となっております。
北陸新幹線が開通する前は特急「はくたか」が走っていた路線でもありますが、それが無くなった今となっては立派すぎる線路だけが残ってしまった感もありますが……。しかし、カーブが少ないおかげで普通列車でも妙に速く感じる。
ほくほく線自体は犀潟から六日町までの路線となっていますが、多くの列車がJR信越本線と上越線に乗り入れて直江津から越後湯沢までを結ぶ形になっています。ただ、ほくほく線で鉄印がもらえるのが十日町駅だけなので、ここで下車。飯山線と接続する駅であり、少し前に飯山線を乗り通したときにも来ていたりもします。
で、問題は鉄印をもらったあと。宿泊予定の柏崎へ行くのに、飯山線で宮内まで行って信越本線で柏崎、というルートもあるんですが、なにせ飯山線の本数が少ないので、ほくほく線で犀潟まで戻り、そこから信越本線に乗ったほうが早いっていう。来た道をそのまま引き返すのも気が進まないところではありますが、ここは時間を取りました。それでも十日町での待ち時間が1時間くらいあったので、歩いて5分くらいのところにあるセブンイレブンまで行ってみたんですが、店内にまもなく閉店するという張り紙が。周辺にはそれなりに住宅がある感じなんですが、採算取れないのかなあ……。
犀潟まで引き返してきたときには日もとっぷり暮れていたのですが、駅のアナウンスによると直江津方面の列車が雨の影響でかなり遅れが出ている模様。私が目指す柏崎方面は幸いなことに遅れは出ていなかったのですが、翌日も東北地方に強い雨雲がかかる予報となっていたので、一抹の不安が……。
なお、この日の晩飯は柏崎駅の北にあるアーケード街にあった「そばよし」というお店でチャーシュー麺を食べたんですが、薄切りのチャーシューが丼を覆い尽くすなかなかのボリューム感で良かったです。また行きたいけど柏崎を再訪する機会あるかなあ……。
2日目
この日は、越後線で新潟まで行き、そこから特急「いなほ」に乗り換えて坂町で降りる予定でした。んで、坂町からは米坂線の代行バス(2022年の豪雨災害で運休となり、以降代行バスが運行されている)に乗り、今泉から山形鉄道に乗って鉄印もらい、そのあと福島へ出て阿武隈急行で鉄印もらいつつ槻木まで行き、そこから東北本線で郡山、磐越西線で会津若松まで行って一泊、というプラン。
新潟から坂町まで特急を利用するコトにしていたのは、米坂線代行バスの本数が少なく、特急を使わないと上手く乗り継げないためでした。特急を使わないと、3〜4時間レベルでタイムロスしてしまうという。なので、遅れや運休が出ると途端にプランが大きく狂ってしまう危うさも孕んでいたワケですが、やはりと言うべきか、そのリスクが顕在化してしまうコトに。
というのも、酒田より北あたりで大雨が見込まれるため、前日の夜のうちにこの日の特急「いなほ」の全面運休が決定。2日目の出発前からプランが崩壊するコトに……。
とりあえず会津若松に宿は取っているので、なんとかそこにはたどり着かないといけないワケですが、素直に考えるなら新津から磐越西線に乗って会津若松を目指すルートが考えられます。しかしこのルートはちょっと前に乗ったばかりであり、おまけにこれだとすげー中途半端な時間に会津若松についてしまいます。それはちょっとイマイチ……。
とにかくまずは越後線に乗ってしまおう、というコトで、柏崎を5時32分に発車する始発列車に乗り込みます。さすがに眠い。
この時点で柏崎は特に雨も降っておらず、越後線も定刻通りの運行でした。吉田駅での乗り換えを挟んで、予定通りの時間に新潟駅に到着。
んで、ここからどうするかと言うと、なんとか時間的な帳尻を合わせるために夢の超特急・新幹線の力を借ります。つまり、新潟から上越新幹線で大宮まで行き、そこから東北新幹線に乗り換えて福島まで行ってしまおうというワケです。幸い、こっちの新幹線ルートは雨の影響もありませんでしたし。
新幹線でこれだけの距離を乗るとなかなかの料金が掛かってしまいますが、このとき使用していたのが「週末パス」だったのが不幸中の幸い。乗車区間はすべて週末パスのフリーエリアなので、特急券だけ買い足せば新幹線に乗れるワケですね。
そんなワケで、新潟を8時半くらいに出発し、3時間程度で福島までたどり着くことができたのでした。なお、何気に上越新幹線に乗ったのってこれが初めてだったりもします(そもそも新潟方面に行く機会がほとんど無かったので)。
で、福島に到着したのは良いんですが、こちらはかなりの大雨になっていました。ここから阿武隈急行線に乗り継ごうと思いつつ、これ定時運行されるんだろうかとちょっと心配になりましたが、私が乗った時点ではとりあえず問題なし。なお、鉄印は福島駅でもらえました。
ただ、そもそも阿武隈急行線の駅の入口がわかりにくくて、ちょっと迷子になりました。阿武隈急行線の向かいのホームからは、飯坂温泉方面へ行く福島交通という路線も出ているんですが、『駅メモ!』的には阿武隈急行に乗りながら全部レーダーで取れちゃいましたね。
道中、列車の運行は問題なかったんですが、途中の駅ではホームの奥にある法面から大量の水が溢れ出しており、線路がかなり水浸しになっていたりしてヒヤヒヤ。
それでも無事、阿武隈急行の終点である槻木駅に到着。福島から槻木まで一本でいく列車は2時間に1本くらいしか無いんですが、このときはたまたま新幹線から上手く乗り継げました。会津若松方面に向かうにはちょっと時間に余裕がありそうだったのでどうしようかな、と思っていた矢先、駅のアナウンスで福島〜白石間での大雨により東北本線が止まっており、復旧の目処が立っていない、とのこと。えーと……。
個人的な印象としては、「復旧の目処が立っていない」という場合「数時間、下手すりゃ半日レベルで復旧しない可能性があるから覚悟してね」という意味かなと思っているんですが、そうなると取りうる選択肢は
- どうしようも無いので復旧まで待つ
- 阿武隈急行で福島まで折り返す
の二択かな、と思われます……が、ここでふと第三の選択肢が思い浮かんでしまいました。
というのは、この槻木駅の一駅となりに岩沼という駅があり、こちら東北本線と常磐線が分岐する駅になっています。運行情報を見る限り常磐線は通常通り動いており、常磐線でいわきまで行って磐越東線に乗り換えて郡山へ行くことできるよな……と。しかもどちらもまだ『駅メモ!』でまだアクセスしていない路線。
駅前には一応タクシー乗り場があったんですが、すでに二組ほど並んでいる人がおり、どれくらいのペースでタクシーが来てくれるかもよくわからない状態。Google Mapで調べてみると、槻木駅から岩沼駅までは徒歩でだいたい1時間半。乗り継ぎを調べてみると、そのあとに来る常磐線に乗って行けば、21時半くらいには会津若松に着けることが判明。
というワケで、意を決して岩沼駅まで歩きました。このへんはもう雨降っていなかったし、あと思いの外涼しかったし。坂道もほとんど無かったのも良かったですね。
ただ、私が岩沼駅にたどり着くころには、乗客を乗せて仙台方面へ向かう列車が普通に動いておりました。……思いの外早く復旧してんじゃん……。
結果的には槻木駅で待つ、が正解だったようですが、あのとき与えられた情報の中ではベターな選択だったのではないかな、とは思っております。なんか疲れたけど。
しかしなんだ、乗り鉄旅の一番面白いところってダイヤとにらめっこしながらパズルのごとく旅程を組むところにあって、実際に出かけるのはその答え合わせみたいなものだと思っているんですが、今回のようにその計画が狂ったときにどうリカバリーするか、というのも脳の瞬発力が求められて面白いな、などと思ってしまいました。まあ、リカバリーしようのない状況に追い込まれる可能性もありますが……。
常磐線や磐越東線は通常通り動いており、なんやかんやで会津若松にたどり着けたのでした(晩飯は郡山のNewDaysで弁当を調達)。
常磐線の岩沼からいわきの区間は東日本大震災で大きなダメージを追った区間ですが、福島原発に近いエリアの駅は今でもなんだかひっそりとした雰囲気でしたね。帰宅困難区域はかなり減ってきているようですが、それでもまだ原発事故の爪痕は大きく、現在進行系の問題であり続けているのは間違いないワケで。
私は原発廃止論者ではありませんが、考えさせられる風景でした。
3日目
そもそも会津若松ってちょっと前に只見線乗ったときに宿泊したばっかなんですが、またここに宿泊したのは会津鉄道に乗るためです。こちらは会津若松を出発して西若松で只見線と分岐し、会津田島まで行く路線。会津田島からは野岩鉄道という別路線に接続することになるんですが、どちらも第三セクターで鉄印もやっているので、乗らないワケにはいかないのです。
ただ、乗り継ぎを調べてみるとあんまり早い列車に乗っても意味がなく、9時過ぎに会津若松発の列車に乗車。なんか席によってはテーブルまで付いてた。
只見線に比べれば混まないのかな、と思っていたんですが、途中の芦ノ牧温泉駅でかなり人が乗ってきて、数駅先の湯野上温泉駅でどどっと降りていきました。温泉ハシゴ企画でもやっていたんでしょうか。
会津田島駅で鉄印をもらい、ここからは野岩鉄道に乗り換え……なんですが、乗るのは東武の特急リバティ。
野岩鉄道もかなり本数が少ない路線で、ここまで乗り入れてきている東武特急に乗らないと次に来る列車が2時間後だったりするんですよね。この特急自体は浅草まで行くヤツですが、野岩鉄道利用者への救済措置として、野岩鉄道の終点となる新藤原駅までの利用であれば特急料金を支払わなくていい、とされています。
ただ、リバティ自体は全席指定席となっており、空いてる席に座っても良いけど、指定券持ってる人が来たら席を譲ってね、というシステム。鬼怒川温泉とか東武ワールドスクウェアは新藤原のもうちょい先なので、そこまで混まないかなと思い座っていたんですが、結局新藤原までの間に2回席を移動することになりました。思いの外混んでた。
リバティ自体はすこぶる快適な列車だったんですが、しかし第三セクターの旅という風情では無いですね。
新藤原で野岩鉄道の鉄印をもらい、ここからは東武鬼怒川線の普通列車に乗り換え。
この列車の終点である下今市まで乗り、そこからちょっと歩いてJRの今市駅から日光線に乗り換えます。しかしこの駅名、なんとも味があるな……。
日光線で宇都宮まで行き、微妙に時間があったため烏山線に乗ります。これ乗ると、『駅メモ!』的に栃木県コンプリートなので。
この路線、宇都宮から30kmちょい先の烏山という駅までを結ぶ短い路線(正確には宝積寺〜烏山間)なんですが、車両が特徴的なようで、鉄道マニアにはよく知られた路線らしい。
要は蓄電池を搭載している車両で、宝積寺から烏山までの非電化区間を蓄電池の電力で走るという。そういや、九州で乗った「DENCHA」という名前が付いている車両も同じ発想の車両なのか。
終点の烏山駅で改めて車両を見てみると、下の写真奥の部分にだけ架線があるのがわかります。こうして停車中に急速充電しているんですね。あとは宇都宮から宝積寺は電化されているので、その区間を走行するときはパンタグラフを上げて充電しながら走ると。
私はもともと鉄道マニアでもなんでもなく、ふとした思いつきで『駅メモ!』と乗り鉄旅をし始めた人間なんですが、さすがにこうしてあちこちの鉄道に乗るようになってくると、知らない間に鉄道への知識と興味が増えていっている感はありますね。
烏山線に乗ったあとは、上野東京ラインで東京へ出て、新幹線で帰路につきました。初日と3日目はプラン通りに進むことができましたが、2日目はかなり混乱しましたね。ていうか、あの山形から秋田のあたりは豪雨災害に見舞われがちな印象がありますが、地形や河川の多さなどが影響しているんでしょうか。
そして路線単体で見ると赤字になってしまっている地方のローカル線は、災害で寸断されてしまうと復旧のコストが見合わないとかなんとかで廃線になってしまうケースもあるため、乗りに行くならさっさと乗りに行かないとマズいな、と思います。豪雨災害は年々激甚化していますしね。今回代行バスに乗ろうとしていた米坂線も、まだ復旧の目処は立っていないようです。ていうか鉄道路線としては廃線になりそうな気配が……。
災害の激甚化と人口減少の加速という状況下にあって、地方の公共交通のあり方というのは今後ますますクローズアップされていくんでしょう。『駅メモ!』は「鉄道の復興」をテーマとして掲げているようですが、特に地方の鉄道に関しては今後どんどんその数を減じていく傾向に歯止めはかからないんだろうな、と思います。だからこそ、今のうちにあちこちの鉄道に乗っておこう、と思い立ったんですが。
最後に、このときの大雨で再び大きな災害に見舞われた能登半島の方々にお見舞い申し上げます。少し前にのと鉄道に乗りに行こうと思ったら、局地的な大雨により羽咋で列車が止まってしまい引き返さざるを得なかったので、なんとか改めて能登半島を訪れたいのですが、とりあえずのと鉄道に乗りに行くぶんには問題ないのかな……。